SHARE:

相続チラシの作り方|不動産の相続案件を獲得する訴求と例文

「相続の相談は増えている気がするが、うちには来ない。相続チラシを作ってみたいけれど、売却チラシとどう違うのか分からない」——地域密着で営業している会社ほど、こうした悩みを抱えているのではないでしょうか。

結論から言うと、相続チラシは売却チラシとは訴求の起点が異なります。

売却チラシは「売りたい人」に向けた広告ですが、相続チラシは「売るかどうかまだ決めていない人」に向けた広告です。

2024年4月の相続登記義務化により、相続した不動産を放置しづらい状況が生まれており、この変化を踏まえた訴求が反響を左右します。

この記事では、相続チラシが必要とされる背景、反響が出る構成と例文、誇大広告・おとり広告に関わる注意点、配布エリアとタイミングの選び方までを整理します。

読み終える頃には、自社の相続チラシを見直す視点が揃っているはずです。

相続チラシとは?不動産相続チラシが求められる背景

相続チラシとは、相続によって不動産を取得した、あるいは取得する予定がある層に向けて、売却・活用・管理などの相談を促すチラシです。

「相続 チラシ」と検索する営業担当の多くは、売却物件募集チラシとの違いに戸惑いますが、両者は目的も相手の心理状態もまったく違います。

相続チラシの読み手はまだ何も決めていない

売却チラシを受け取る人は、多かれ少なかれ「売ろうか」という気持ちが芽生えています。

一方、相続不動産チラシを受け取る人の多くは、まだ何も決めていません。

実家をどうするか考える余裕がなかった、名義変更すら済んでいない、といった状態のまま数年が経過しているケースも珍しくありません。

相談の入口を作り、売却・活用・管理につなげる

相続チラシの役割は、こうした「決めていない層」に選択肢を提示し、相談の入口を作ることにあります。

相談の入口さえ作れれば、そこから売却・賃貸・空き家管理・買取など複数の商材につながる可能性があります。

実際、相続の相談を起点に、売却が難しければ不動産買取を案内したり、活用が決まらない間は空き家管理の受託を提案したりと、複数の入口を持つ会社ほど取りこぼしが少なくなります。

相続不動産チラシは、その最初の接点を作るための広告だと捉えると設計しやすくなります。

相続登記の義務化で相続不動産チラシの訴求が変わった理由

相続登記の義務化は、相続チラシの訴求を考えるうえで欠かせない前提です。

相続登記は3年以内・怠ると10万円以下の過料

2024年4月1日に施行された制度により、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請することが義務となり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になるとされています(法務省)。

この制度によって、「そのうち考えよう」で済ませられる期間には一定の限りがある、という状況が生まれました。

以前であれば「実家は当分そのままでいい」という所有者も多かったのですが、登記の期限を意識せざるを得ない場面が増えたことで、専門家への相談自体のハードルが下がっている可能性があります。

登記は司法書士の業務——代行できるとは書かない

ここで注意したいのは、不動産会社が登記手続きそのものを代行できるわけではない、という点です。

登記は司法書士の業務範囲であり、不動産会社の役割は「登記を終えた後、あるいは登記を検討する段階で、その不動産をどうするか」の相談に応じることにあります。

相続チラシで登記義務化に触れる場合も、「登記のご相談も承ります(提携の司法書士をご紹介します)」といった正確な書き方に留め、自社が登記業務を行えるかのような表現は避ける必要があります。

反響が出る相続チラシの基本構成

相続チラシは「まだ決めていない層」に向けた広告である以上、売却を迫らない構成が反響につながりやすくなります。

基本となる要素は次の4つです。

①相続した実家の状況への声かけ

「相続した実家、まだ手続きが済んでいませんか」「〇〇町にご実家がある方へ」のように、対象者の状況をそのまま言葉にします。

地名や築年数を入れるほど、自分ごととして読まれやすくなります。

②売る・貸す・持ち続けるという相続後の選択肢

「売る・貸す・そのまま持つ、どれが合っているか一緒に整理します」のように、売却だけを前提にしない書き方が有効です。

相続不動産チラシで売却だけを強く押すと、まだ決めていない層は距離を置いてしまいます。

③相談のハードルを下げる約束

「相談だけでも構いません」「登記前でも大丈夫です」「他の相続人の方とご一緒でも構いません」など、相談に踏み出しやすい一言を添えます。

相続は複数の関係者が絡む案件が多いため、この配慮が信頼につながります。

④会社情報と宅建業免許番号の表示

商号、宅建業免許番号、取引態様、所在地・連絡先を記載します。

相続チラシも宅建業の広告である以上、必須表示を省略することはできません。

書き方の全体像は売り求むチラシの作り方と例文でも触れているとおり、売却系のチラシに共通する原則です。

そのまま使える相続チラシの例文・キャッチコピー

キャッチコピーは「相手の状況+相談のしやすさ」を軸に作ると、誇張なく具体性を出せます。

実在の会社名は使わず、〇〇町・△△不動産のように置き換えて使ってください。

実家の相続型

「ご実家を相続された方へ。

売る・貸す・活用する、どの方法が合うか一緒に考えます。

△△不動産(〇〇町・地元〇年)」。

エリア名と対応年数を入れることで、地場業者としての信頼感を出せます。

登記前・手続き未了型——司法書士との連携を示す

「相続した不動産、名義変更や登記がまだの方もご相談ください。提携の司法書士と合わせてご案内します」。

登記業務そのものは行えないため、あくまで「相談に応じる」「提携先を紹介する」という表現に留めます。

空き家・活用型

「相続した家が空き家のままになっていませんか。売却だけでなく、貸す・管理を任せるという方法もあります」。

空き家化している相続不動産には空き家チラシの作り方で紹介している訴求とも重なる部分が多く、両方の視点を持っておくと提案の幅が広がります。

避けたいのは「相続税がゼロになります」「必ず高く売れます」といった、専門外の分野への断定的な言及です。

相続税の相談は税理士の領域であり、不動産会社が踏み込んで断定すると、後述する表示上のリスクだけでなく、税務の専門家との連携先としての信頼も損ないます。

相続チラシに関わる誇大広告・おとり広告の注意点

相続チラシは相談ベースの広告であるぶん、「事例」や「相場」を紹介する場面が多くなります。

ここで気をつけたいのが、宅建業法32条が定める誇大広告等の禁止です。

この規定は、誤認や損害の発生を問わず成立する運用がされており、「絶対に高く売れます」「相続なら必ず得です」といった断定的な表現は、実害がなくても違反の対象になり得ます。

違反時は指示・業務停止等の監督処分に加え、6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方が定められています(同法81条)。

「相続案件を多数扱っています」は根拠が問われる

もう一つ注意したいのが、不動産の表示に関する公正競争規約21条が定めるおとり広告の禁止です。

これは①存在しない物件、②取引できない物件、③取引する意思がない物件を広告することを禁じるもので、違反すると警告または50万円以下の違約金、警告に従わないときは500万円以下の違約金が科されることがあります(同規約27条)。

相続チラシで「〇〇町の相続案件を多数扱っています」と書く場合、実際に取り扱った事例が根拠として存在するかが問われます。

実態のない「事例の多さ」を強調することは避けるべきです。

相続不動産チラシにも表示規約8条の必要表示事項は及ぶ

また、同規約8条では新聞折込チラシを含む媒体種別ごとに必要な表示事項が定められています。

相続チラシであっても、通常の物件広告と同じ表示ルールの枠の中にあることを前提に紙面を作る必要があります。

表示規制の全体像を確認したい場合は、査定訴求を扱った不動産査定チラシの作り方も参考になります。

相続不動産チラシの配布エリアとタイミングの選び方

相続チラシの配布エリアは、築年数の古い住宅が多いエリア、高齢の所有者が多い住宅街、自社が相続関連の相談実績を持つエリアが基本になります。

新しい分譲地や賃貸中心のエリアでは、相続の相談が発生する層自体が薄いため、反響の効率は上がりにくくなります。

相続チラシは帰省時期の前後に合わせて配る

タイミングについては、単発配布よりも季節・時期に合わせた継続配布が向いています。

年末年始やお盆の帰省時期は、実家について家族で話し合う機会が増えると考えられており、その直前・直後に配布を合わせる会社も見られます。

また、相続に関する相談会やセミナーと組み合わせる方法も有効です。

チラシだけで相談を決断してもらうのが難しい場合、まずは相続セミナー・相談会チラシで参加のハードルを下げ、そこから個別相談につなげるという二段構えの設計もよく使われます。

反響が出にくい前提で継続配布する

配布量については、相続不動産チラシは売却チラシよりもさらに反響が出にくい広告である前提を持っておくべきです。

1回の配布結果だけで判断せず、同一エリアへの継続配布を通じて「相続のことなら、あの会社」という認知を積み上げていく発想が合っています。

相続チラシのよくある質問

Q. 相続チラシと売却チラシ(売り求むチラシ)はどう違いますか?

売却チラシは「売ろうか」と考えている層に向けた広告ですが、相続チラシは「まだ何も決めていない」層に選択肢を提示する広告です。

売却を前面に出しすぎず、相談のハードルを下げる書き方が向いています。

Q. 相続登記の義務化について、チラシでどう触れればよいですか?

「相続登記が2024年4月から義務化されている」という事実に触れるのは問題ありませんが、登記手続きそのものは司法書士の業務です。

「登記のご相談も承ります(提携の司法書士をご紹介します)」のように、自社の役割を正確に書く必要があります。

Q. 「相続税がお得になります」と書いてもよいですか?

相続税の判断は税理士の領域であり、不動産会社が断定的に書くのは避けるべきです。

誇大広告等の禁止(宅建業法32条)に触れる可能性もあるため、税務に関わる表現は専門家への相談を促す書き方に留めるのが安全です。

Q. 「相続案件を多数扱っています」と書いても問題ありませんか?

実際に取り扱った事例が根拠として存在する場合は問題ありませんが、実態のない「多さ」を強調する表現は、おとり広告の禁止(表示規約21条)に関わるリスクがあります。

書ける事実の範囲で表現することが原則です。

Q. 相続チラシはどのエリア・時期に配るのが効果的ですか?

築年数の古い住宅が多いエリアや、相続関連の相談実績があるエリアが基本です。

時期については、年末年始やお盆前後など、家族で実家について話し合う機会が増えやすい時期に合わせて配布する会社も見られます。

相続チラシで相談の入口を作るために

相続チラシは、売却チラシとは異なり「まだ決めていない層」に選択肢を提示する広告です。

相続登記の義務化という制度変化を背景に、相談自体のハードルが下がっている可能性がある一方、誇大広告や登記業務の代行を思わせる表現には注意が必要でした。

売る・貸す・管理する、という複数の選択肢を用意し、相談のしやすさを前面に出すことが、相続不動産チラシで反響を得るための基本になります。

まずは自社が対応実績を持つエリアで、小規模な配布から始めてみてください。

相談から個別対応につなげたい場合は相続セミナー・相談会チラシの作り方を、活用が決まらない相続不動産の受け皿としては空き家管理チラシの作り方も合わせて確認しておくと、相続チラシから生まれる相談を取りこぼさずに次の提案へつなげられます。

出典・参考資料

  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するお知らせ」——相続登記の義務化(2024年4月1日施行)、正当な理由なき申請漏れに対する過料
  • 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)——誇大広告等の禁止(第32条)、罰則(第81条)、報酬(第46条)
  • 不動産の表示に関する公正競争規約——おとり広告の禁止(第21条)、違約金(第27条)、媒体種別の必要な表示事項(第8条)
あなたへのおすすめ