空き家管理チラシの作り方|管理受託につなげる訴求とは?
「実家を離れて暮らしている所有者に、空き家管理のサービスを知ってもらいたい。でも売却チラシとは訴求のポイントが違う気がして、どう作ればいいのか分からない」——賃貸管理や売買仲介を手がける会社の担当者であれば、一度はこの悩みにぶつかったことがあるはずです。
結論から言うと、空き家管理チラシは「今すぐ売る・貸す」を迫るチラシではなく、「持ち続けている間の不安を代わりに引き受ける」ことを伝えるチラシです。
売却チラシや賃貸募集チラシとは訴求の軸が異なり、同じ調子で作ると響きません。
空家等対策特別措置法の改正で行政の関与が強まっている今、管理受託の入口としてのチラシの役割はむしろ大きくなっています。
この記事では、空き家管理チラシの基本構成、そのまま参考にできる訴求例、表示上の注意点、配布エリアの選び方までを整理します。
読み終える頃には、管理受託の一枚目を作るための材料が揃っているはずです。
空き家管理チラシとは?管理受託ビジネスの入口としての位置づけ
空き家管理チラシとは、遠方に住んでいる、あるいは相続などで所有することになった空き家の所有者に向けて、定期巡回・清掃・通風・郵便物確認といった管理サービスの利用を呼びかけるチラシです。
売却物件を集める「売り求むチラシ」や、賃貸物件を集める募集チラシとは違い、いきなり資産の処分を求めるものではありません。
売却チラシが「今すぐ動いてほしい」層に刺さる設計であるのに対し、空き家管理チラシは「まだ売るか貸すか決めていないが、放置していることへの後ろめたさがある」層に届く設計です。
空き家管理は決断を先延ばしにしてよい選択肢
所有者の多くは、遠方に住んでいて頻繁に見に行けない、実家を手放す決断がまだつかない、といった事情を抱えています。
管理サービスは「決断を先延ばしにしてよい選択肢」を提示できる点で、他の空き家関連チラシとは役割が異なります。
管理受託の価値は将来の売却・活用の相談相手になれること
管理受託そのものの単価は決して大きくありませんが、管理契約を結んだ所有者は、将来的に売却や賃貸活用を検討する段階で最初に相談する相手になりやすい傾向があります。
管理受託は単体の収益源であると同時に、将来の媒介・仲介案件を育てる接点でもあります。
売却・活用の訴求を軸にしたチラシについては空き家チラシの作り方で扱っていますので、管理チラシと合わせて設計すると導線がつながります。
空き家が増える背景と管理不全空家という法改正の文脈
総務省の「住宅・土地統計調査」(2023年)によると、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%とされています。
この数字自体は全国集計であり地域差が大きいものですが、空き家が特定の所有者だけの問題ではなく、社会的な関心事になっていることを示す背景として押さえておく価値があります。
2023年12月施行の「管理不全空家」制度
加えて、2023年に空家等対策特別措置法が改正され、同年12月に「管理不全空家」という区分が新設されました。
これは、放置により将来的に特定空家(倒壊等のおそれがある空き家)になりかねない物件を対象に、行政が指導・勧告を行いやすくする制度です。
管理不全空家として指導・勧告の対象になり、勧告を受けた段階で固定資産税の住宅用地特例から外れる可能性があるなど、所有者にとって具体的な不利益につながる仕組みが整いつつあります。
空き家対策の制度に触れるときは断定を避ける
チラシでこの制度に触れる際は、「管理不全空家に指定されると必ず税負担が増える」といった断定は避け、「管理が不十分な空き家への行政の関与が強まっている」という事実の範囲で伝えるのが安全です。
制度の存在自体が、遠方に住む所有者に「そろそろ何かしなければ」と思わせるきっかけになり得ます。
相続をきっかけに空き家を抱えるケースも多いため、相続チラシの作り方で紹介している訴求と組み合わせると、より幅広い層に届けやすくなります。
反響が出る空き家管理チラシの基本構成
空き家管理チラシで反響を得るには、所有者が抱える不安の種類に応じて情報を並べる必要があります。
基本の構成要素は次の通りです。
①誰に向けたチラシかの明示
「〇〇町にご実家をお持ちで、遠方にお住まいの方へ」のように、対象者の状況を具体的に描写します。
エリア名と生活状況を組み合わせることで、自分ごととして読んでもらいやすくなります。
②放置のリスクと管理の効果
雑草の繁茂、郵便物の滞留、外観の劣化といった具体的な状態を挙げ、定期的な管理でそれらを防げることを伝えます。
ここで「管理不全空家に指定される可能性がある」という事実を、断定を避けた表現で添えるのも有効です。
③管理サービスの内容——巡回・清掃・写真報告
月〇回の巡回、写真報告、簡易清掃、通気・通水など、実際に提供する作業を具体的に書きます。
「見に行くだけ」なのか「作業まで含む」のかが曖昧だと、問い合わせ後のミスマッチにつながります。
④相談のハードルを下げる一言
「まずは現地の状況だけでも確認します」「管理か売却か迷っている段階でも構いません」など、決断を求めない姿勢を示します。
空き家管理チラシは他の集客チラシ以上に、押しつけない言い回しが反響に直結します。
⑤空き家管理を行う会社情報と連絡先
商号、所在地、連絡先を明記します。
管理受託自体は宅建業の代理・媒介には当たりませんが、同じ会社が売買・賃貸の仲介も行っている場合は、事業者として誰が運営しているかを明確にしておくことが信頼につながります。
空き家管理チラシのキャッチコピー・例文
キャッチコピーは「所有者の状況+不安+解決の一言」の組み合わせで作ると、誇張なしに具体性を出せます。
タイプ別に例文を紹介します。
遠方居住型——実家を見に行けない所有者へ
「〇〇町のご実家、最後に見に行ったのはいつですか。月1回の巡回で、雑草・郵便物・外観をご報告します」。
遠方に住む所有者は「見に行けない」こと自体への負い目を抱えていることが多く、その気持ちに寄り添う言い回しが向いています。
相続直後型
「相続した実家、まだ結論を出していなくても大丈夫です。管理をしながら、売る・貸す・残すをゆっくり考えられます」。
相続直後は判断を急かされたくない層が多いため、猶予を与える表現が効果的です。
行政制度への言及型——管理不全空家に触れる
「空き家の管理不全が指摘されるケースが増えています。〇〇町エリアの巡回管理、まずはご相談ください」。
制度に触れる場合は、対象者や適用条件を断定せず、あくまで背景として添えるにとどめます。
避けたいのは「管理しないと罰金になります」「必ず特定空家に指定されます」といった、制度の適用範囲を超えた煽り表現です。
管理不全空家の指定は個別の判断であり、一律に不利益が生じるわけではありません。
事実以上に不安を煽る表現は、後述する表示規制の観点からもリスクがあり、何より所有者との信頼関係を損ないます。
誇大広告にならないための注意点——管理受託チラシでも表示は事実の範囲で
空き家管理サービス自体は宅建業の代理・媒介行為ではないため、不動産の表示に関する公正競争規約が直接適用される場面は限定的です。
ただし、同じ会社が売買・賃貸の仲介も行っている場合、チラシの中で将来の売却・活用に触れることがあれば、その部分は宅建業法32条の誇大広告等の禁止や、景品表示法の規制対象になり得ます。
誇大広告の禁止は誤認や損害の発生を問わず成立する運用がされているため、「管理受託の話だから大丈夫」と切り分けて考えるのは危険です。
空き家対策の制度は名称と施行時期だけ事実で書く
特に注意したいのは、行政制度への言及です。
「管理不全空家」という区分は2023年12月に施行された比較的新しい制度であり、所有者側の認知度がまだ高くありません。
だからこそ、正確に伝えることが信頼につながる一方、不正確な伝え方をすると「不安を煽って契約させた」という受け止められ方をされるリスクもあります。
制度名や施行時期など、確認できる事実だけを書き、適用条件や不利益の程度については断定しない書き方を徹底してください。
査定訴求を足すなら査定チラシと同じ注意が要る
また、管理受託チラシの中で「将来的な売却査定も無料で対応します」といった訴求を加えるケースもあります。
この場合、査定サービスの表示については通常の査定チラシと同じ注意が必要です。
査定訴求の書き方は不動産査定チラシの作り方で詳しく解説していますので、あわせて確認しておくと安心です。
配布エリアの選び方とタイミング、管理受託から次の提案への展開
空き家管理チラシの配布エリアは、空き家そのものが多い地域よりも、所有者が遠方に住んでいる可能性が高い地域を狙うほうが効率的です。
具体的には、旧市街地の住宅密集地、高齢化が進んだ分譲地、相続の発生が想定される築古の戸建てエリアなどが候補になります。
空き家の外観(郵便物の滞留、雑草、雨戸の閉まりっぱなしなど)を歩いて確認し、対象を絞ってから配布する方法も有効です。
空き家管理チラシは台風・納税通知の時期に合わせる
配布のタイミングは、台風や大雪など気候イベントの前後、あるいは固定資産税の納税通知が届く時期に合わせると、所有者の関心が高まりやすい傾向があります。
単発の配布よりも、同一エリアへの継続配布を通じて「困ったときに思い出してもらう会社」になることを狙う設計が向いています。
定期報告のやり取りが売却・活用の相談機会になる
管理契約を結んだ所有者とは、報告のやり取りを通じて継続的な接点が生まれます。
管理契約を結んだ所有者との定期的な報告のやり取りは、将来の売却・賃貸活用の相談を受ける自然な機会になります。
管理受託をオーナー向けの提案営業全体の入口として位置づける考え方は、空室対策の提案チラシで紹介している空室オーナーへのアプローチとも重なる部分が多く、あわせて設計すると管理会社としての提案の幅が広がります。
将来的にオーナー向けのセミナーへつなげる場合は、賃貸経営セミナーの集客方法も参考になります。
空き家管理チラシのよくある質問
Q. 空き家管理チラシは売却チラシと同時に配ってもよいですか?
同時に配ること自体に問題はありませんが、訴求の軸を混ぜないほうが反響につながりやすい傾向があります。
「今すぐ売る・貸す」を迫らない層には管理チラシ、決断が固まっている層には売り求むチラシのように、対象に応じて使い分けることをおすすめします。
Q. 「管理不全空家」という言葉をチラシに使ってもよいですか?
制度の存在や施行時期など、確認できる事実の範囲であれば使用できます。
ただし「あなたの家も対象になります」といった、適用条件を超えた断定は避けてください。
事実の背景として添える程度にとどめるのが安全です。
Q. 空き家管理サービスの広告にも宅建業法の規制がかかりますか?
管理受託自体は宅建業の代理・媒介には該当しないため、表示規約が直接適用される場面は限定的です。
ただし同じチラシで売却・賃貸の仲介に触れる場合は、その部分に誇大広告等の禁止(宅建業法32条)や景品表示法の規制が及びます。
Q. 空き家管理チラシの反響はどのように活かせばよいですか?
管理契約そのものの収益は大きくありませんが、定期的な報告のやり取りを通じて、将来の売却・賃貸活用の相談を受けやすくなります。
管理受託を単体の商材ではなく、オーナーとの関係構築の入口として位置づけるのが実務的です。
Q. どのエリアに配布するのが効果的ですか?
空き家が多いエリアよりも、所有者が遠方に住んでいる可能性が高い旧市街地や高齢化の進んだ分譲地が向いています。
外観から放置状況を確認し、対象を絞って配布する方法も有効です。
空き家管理チラシで管理受託を増やすために——まず伝えるべきこと
空き家管理チラシは、売却や賃貸を迫るチラシではなく、「決断を先延ばしにしてよい」ことを伝えるチラシです。
全国で約900万戸、空き家率13.8%とされる状況の中、2023年の法改正で管理不全空家という区分が新設されたことは、所有者にとっても他人事ではなくなりつつあります。
この文脈を事実の範囲で伝えつつ、放置のリスクと管理の具体的な効果、相談のハードルを下げる一言を組み合わせることが、反響につながる基本構成です。
まずは自社が対応可能なエリアを絞り、管理サービスの内容を具体的に書いた一枚から始めてみてください。
管理受託をきっかけにした所有者との関係は、相続や将来の売却相談へと発展することも少なくありません。
相続をきっかけとした相談導線は相続チラシの作り方、将来の売却提案は空き家チラシの作り方もあわせて参考にしていただくと、管理受託から次の提案までの流れを一通り設計できます。
出典・参考資料
- 総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(2023年改正、2023年12月施行)——「管理不全空家」の新設
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)——誇大広告等の禁止(第32条)
- 不動産の表示に関する公正競争規約(公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会等)
