不動産チラシの記載事項一覧|必須表示と違反になる例
「このチラシ、免許番号を入れ忘れていないか」「広告有効期限って、うちの物件チラシにも必要なのか」——チラシの校正段階で、記載事項のルールに自信が持てず手が止まった経験がある担当者は少なくないはずです。
結論から言うと、不動産チラシの記載事項は不動産の表示に関する公正競争規約8条とその別表で、媒体や物件種別ごとに具体的に定められています。
新聞折込チラシやポスティングチラシもこの規約の対象であり、「知らなかった」では済まされないルールです。
記載を怠ったり事実と異なる表示をしたりすれば、規約違反にとどまらず宅建業法上の指示・業務停止といった行政処分、さらには罰則の対象にもなり得ます。
この記事では、物件チラシに必要な記載事項の全体構造、広告有効期限や徒歩所要時間といった個別ルール、記載漏れや虚偽記載が違法と判断される具体例、そして物件情報を載せない「売り求む」系チラシで最低限押さえるべき表示までを整理します。
不動産チラシの記載事項を定めるルール——表示規約8条とは
不動産チラシに何を書くべきかは、事業者が任意で決めてよいものではありません。
記載事項の根拠は表示規約8条と付属の別表
根拠となるのは不動産の表示に関する公正競争規約8条で、この条文と付属の別表が「どの媒体に、どの物件種別を掲載する場合、何を表示しなければならないか」を具体的に規定しています。
新聞折込チラシや配布用チラシも表示規約の対象媒体であり、店頭に置くだけのビラとは扱いが異なる点に注意が必要です。
この規約は宅建業者が加盟する公正取引協議会が運用しており、法令そのものではありませんが、宅建業法32条の誇大広告等の禁止と実質的に重なる範囲を細かくルール化したものと理解しておくとわかりやすくなります。
違法になるのは宅建業法32条の誇大広告等の禁止
宅建業法32条は「著しく事実に相違する表示」「実際より著しく優良・有利であると誤認させる表示」を禁じており、違反すれば監督処分に加えて6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその併科という重い罰則も定められています(宅建業法81条)。
しかもこの規定は、実際に誰かが誤認して損害を受けたかどうかを問わず成立する運用がとられている点が重要です。
「反響がなかったから実害はない」という言い訳は通用しません。
つまり記載事項のルールは、単なる業界の慣習やマナーではなく、法令上の広告規制を具体的な表示項目に落とし込んだものです。
広告規制全体の体系は不動産の広告規制まとめで整理していますので、チラシ制作の前提知識としてあわせて確認しておくことをおすすめします。
物件チラシの必須表示事項一覧——新築戸建て・中古住宅の例
必須表示事項は物件種別ごとに別表で決まる
表示規約8条の別表は、物件種別(新築分譲住宅、中古住宅、土地、賃貸物件など)ごとに必要表示事項を分けて定めています。
ここでは新築戸建て・中古住宅の売買チラシを想定した代表的な項目を整理します。
実際の項目は種別によって細かく異なるため、自社が扱う物件種別の別表を都度確認する姿勢が欠かせません。
| 区分 | 表示事項の例 |
|---|---|
| 広告主情報 | 商号、事務所の所在地、電話番号、宅地建物取引業免許証番号 |
| 取引条件 | 取引態様(売主・代理・媒介の別)、価格、取引条件の有効期限 |
| 物件情報 | 物件の所在地、土地面積・建物面積、私道負担の有無 |
| 交通・立地 | 最寄駅の名称、駅から物件までの徒歩所要時間 |
| 法令上の制限 | 都市計画法等の法令に基づく利用制限の概要 |
出典:不動産の表示に関する公正競争規約8条・別表をもとに作成。
項目は種別により異なるため一部を抜粋。
私道負担や法令上の制限も記載事項に含まれる
この一覧を見て気づくのは、価格や面積といった「魅力を伝える情報」だけでなく、私道負担や法令上の制限といった「不利になり得る情報」も表示義務の対象になっているという点です。
反響を意識するあまり良い情報だけを大きく載せ、制約情報を省略・縮小するレイアウトは、記載自体はあってもレイアウト上の問題として指摘を受けることがあります。
チラシ全体の構成やデザインの考え方は不動産チラシの作り方完全ガイドでも扱っていますので、記載事項とデザインの両立に悩む場合は参考にしてください。
広告有効期限(取引条件の有効期限)の記載ルール
広告有効期限とは、チラシに記載した価格や取引条件がいつまで有効かを示す表示です。
表示規約では「取引条件の有効期限」として必須表示事項に位置づけられており、価格変更や成約による物件の消滅が起こり得る不動産広告において、消費者が古い情報に基づいて問い合わせてしまう事態を防ぐ役割を持っています。
広告有効期限は日付指定でも「発行日から◯日間」でもよい
実務上は「価格等表示内容は◯年◯月◯日時点のものです」「本広告の内容は掲載後、状況により変更となる場合があります」といった一文をチラシの下部や余白に入れる形が一般的です。
有効期限そのものを具体的な日付で切るケースと、「発行日から◯日間」という形で示すケースがありますが、いずれにせよ「この価格・条件がいつの情報か」を読み手が判断できる表示になっているかがルールの本質です。
広告有効期限の省略はおとり広告との境界をあいまいにする
広告有効期限の記載を省略すると、それ自体が表示規約違反となるだけでなく、既に成約済みの物件を掲載し続けて反響を集める「おとり広告」との境界があいまいになるリスクも高まります。
おとり広告は表示規約21条で①存在しない物件②取引できない物件③取引する意思のない物件の表示として明確に禁止されており、違反した場合は27条により、警告または50万円以下の違約金、警告に従わないときは500万円以下の違約金が科される仕組みです。
おとり広告の具体的な事例や罰則についてはおとり広告とは?不動産の事例・罰則・防止策で詳しく解説していますので、あわせて確認しておくと理解が深まります。
徒歩所要時間の2022年改正と面積表示のルール
徒歩所要時間は「道路距離80mにつき1分」として算出し、端数は切り上げるというルールが定められています。
2022年改正で最も遠い住戸からの徒歩所要時間も必要に
この計算方法自体は以前から変わっていませんが、2022年9月1日の規約改正で、分譲物件(2戸以上を分譲する場合)については、最も近い住戸だけでなく、最も遠い住戸・区画からの徒歩所要時間もあわせて表示することが求められるようになりました。
全区画のうち一番駅に近い住戸の数字だけを代表値として大きく打ち出す表示は、この改正以降はルールに沿っていないことになります。
物件名称の使用基準は一部緩和された
同じ改正では、物件名称の使用基準についても一部緩和が行われました。
たとえば水辺から直線距離で300m以内であれば、「〇〇リバーサイド」のような水辺を連想させる名称の使用が認められるようになるなど、実態に即した見直しも同時に進んでいます。
規制は厳格化される部分と緩和される部分が両方あるため、「以前調べたルールのまま」で判断せず、改正の有無を定期的に確認する姿勢が必要です。
土地面積・建物面積は算出根拠まで明示する
面積表示についても、土地面積・建物面積は登記簿上の数値や実測値のどちらに基づくかを明確にし、私道部分を含む場合はその旨と面積を明記することが求められます。
徒歩所要時間・面積いずれも「数字自体の正確さ」と「算出根拠の表示」の両方がそろって初めて適正な表示になる点は共通しています。
記載漏れ・虚偽記載が違法になるケースとおとり広告との関係
記載事項のルールが厳格である理由は、些細な記載漏れであっても、宅建業法32条の「誤認させる表示」や表示規約のおとり広告規定に該当し得るためです。
たとえば、私道負担がある土地なのにその旨を記載しない、取引態様を「代理」であるにもかかわらず「売主」と誤解されるような書き方をする、といったケースは、意図の有無にかかわらず違反と判断される可能性があります。
記載漏れはおとり広告として措置命令の対象にもなる
とくに注意したいのは、景品表示法5条3号と昭和55年公正取引委員会告示第14号「不動産のおとり広告に関する表示」により、おとり広告は景品表示法上も措置命令の対象になっているという点です。
表示規約違反として業界内の違約金にとどまらず、行政による措置命令という形で公表されるリスクもあることを意味します。
実際、公正取引協議会から厳重警告等を受けた事業者について、大手ポータルサイトが2017年から掲載停止の措置を運用しており、規約違反が自社サイトやチラシだけでなく、ポータル掲載という別の集客チャネルにも波及する時代になっています。
記載事項の最終チェックは免許を持つ自社の責任で
「うっかりの記載漏れだから大丈夫」という感覚は通用しません。
チラシ制作を外部の制作会社やデザイナーに依頼している場合でも、記載事項の最終チェックは宅建業の免許を持つ自社の責任で行う体制が欠かせません。
反響率の実データや改善策とあわせて、ルール順守と成果の両立を検討したい場合は不動産チラシの反響率の記事も参考になります。
売り求むチラシなど物件表示のないチラシで必要な記載事項
ここまで解説してきた必須表示事項は、主に物件情報を掲載する売買・賃貸チラシを想定した規定です。
物件表示のないチラシは別表の直接の対象になりにくい
一方で「売却物件募集」を訴求する売り求むチラシのように、具体的な物件情報を載せない広告も実務では多く使われています。
こうしたチラシは物件そのものの表示がないため、表示規約8条・別表が定める必要表示事項の直接の対象になりにくいという性質があります。
商号・免許番号・取引態様は省略しない
ただし、対象になりにくいことと、何も書かなくてよいことはイコールではありません。
売り求むチラシであっても宅建業者が行う業務に関する広告である以上、商号・事務所所在地・電話番号、宅建業免許証番号、取引態様の明示は実務上の必須事項と考えておくべきです。
これらを欠いたまま「無料査定」「高価買取」とだけ訴求するチラシは、広告主が誰なのかを読み手が確認できず、宅建業法上の誠実さという観点からも望ましくありません。
チラシのポスティング配布そのものの設計については不動産チラシのポスティング戦略で、実際の紙面フォーマットは不動産チラシの無料テンプレート集でそれぞれ扱っていますので、記載事項のルールを踏まえた紙面作りの参考にしてください。
キャッチコピーの表現に迷う場合は不動産のキャッチコピー例文一覧もあわせて確認すると、表示ルールと訴求力の両立がイメージしやすくなります。
不動産チラシの記載事項に関するよくある質問
Q. 不動産チラシに免許番号は記載しなければいけませんか?
はい。
宅地建物取引業免許証番号は表示規約が定める必須表示事項の一つであり、商号・事務所所在地・電話番号とあわせて広告主を特定するための基本情報とされています。
省略は規約違反にあたります。
Q. 広告有効期限はどのように書けばよいですか?
「価格等の表示内容は◯年◯月◯日時点のものです」のように、いつの情報であるかが読み手に伝わる形で記載するのが一般的です。
具体的な日付表記か、掲載日からの日数表記かは事業者の運用によって異なります。
Q. 記載漏れがあった場合、どのような処分がありますか?
表示規約違反として違約金の対象となるほか、内容によっては宅建業法32条の誇大広告等の禁止に抵触し、指示や業務停止といった行政処分、さらに罰則の対象になる可能性があります。
誤認や損害の発生を問わず成立する運用がとられている点に注意が必要です。
Q. 徒歩所要時間の計算方法にルールはありますか?
あります。
道路距離80mにつき1分として算出し、端数は切り上げるのが基本ルールです。
2022年の改正では、分譲物件について最も遠い住戸からの所要時間もあわせて表示することが求められるようになりました。
Q. 売り求むチラシにも記載事項のルールは適用されますか?
物件情報を掲載しない売り求むチラシは、表示規約の必要表示事項の直接対象にはなりにくい構造です。
ただし宅建業者の広告である以上、商号・免許番号・取引態様の明示は実務上必須と考えるべきです。
不動産チラシの記載事項を守り違法な表示を避けるために
不動産チラシの記載事項は、表示規約8条・別表という具体的なルールに基づいており、商号や免許番号、取引態様、広告有効期限、徒歩所要時間の算出根拠など、種別ごとに定められた項目を漏れなく表示することが出発点になります。
記載漏れや事実と異なる表示は、規約上の違約金にとどまらず、宅建業法32条の誇大広告等の禁止やおとり広告規定にも触れ得る違法なリスクを伴う点は、繰り返し強調しておきたいところです。
チラシ制作の担当者としては、反響を伸ばすデザインやコピーの工夫と同じ比重で、記載事項の最終チェックを制作フローに組み込むことが実務的な対応になります。
新しいテンプレートやコピーを試す際も、まずはルールの土台を確認したうえで表現の工夫に取り組む順序を意識してください。
出典・参考資料
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)——誇大広告等の禁止(第32条)、罰則(第81条)
- 不動産の表示に関する公正競争規約(第8条・別表、第21条・第27条)
- 景品表示法(第5条第3号)、昭和55年公正取引委員会告示第14号「不動産のおとり広告に関する表示」
- 不動産の表示に関する公正競争規約 2022年9月1日改正内容(公正取引協議会公表資料)
